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平成26年度秋の講演会は盛況のうちに無事終了致しました。

平成26年度「秋の講演会」レポート

アークヒルズクラブ37階  10:00~12:30

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司会:平澤詩子理事

開会:鈴木千枝子副会長

会長挨拶 橋本洋子

「小さな会であるがこれからどんどん楽しいことをやっていきたい。支援事業協力委員会を立ち上げ、活動を広げていきたい。本日の懇親会では「ミニ同期会」に参加を呼び掛けている。」

企画説明 浜野美幸(準備委員)

「昨年秋の講演会でハル常住先生の“楽体”や澤登先生の“姿勢”の関するお話を聞いて感銘を受けた。矯正歯科医田村元先生の独創的な発想と仕事をぜひ紹介したいと思っていたところへ助産師の吉田敦子先生の情報が入った。さっそく講演を聴きにいったところ、時間軸で咬合の変化について学ぶことができ、子育て支援の一環としてお二人のコラボを考え付き、竹中先生とともに準備委員として企画を練ってきた。本日は、沢山の「?」が「!」に変わることと思う。ぜひしっかりお話を聞いて帰って、家族や周りの妊婦さんに伝えてもらいたい。」

講演会

講演①吉田敦子先生

講師略歴:1983年東京大学医学部附属病院助産婦学校卒業。
病院勤務の後、海外青年協力隊でアフリカ滞在中、文化や生活習慣の違い、妊婦の姿勢の違いが胎児の発育に影響することを学び、帰国後歯NPO法人母子フィジカルサポート研究会理事、助産師
「母と子がその人らしく」をサポートし、ケアにあたっている。

講演タイトル『顎の育ちは母体ケアから』

~講演要約(桐原)~
胎児は「子宮」の中で発育し発達している。健やかな成長のために、妊娠初期から中期にかけては色々な動きが体験できる柔らかく丸い環境が理想的。また妊娠後期には大きな動きがしにくくなり左右対称で安定した屈曲姿勢がとれる環境が望まれる。そのためには「骨盤底筋群」がしっかり働けることが重要。妊婦の姿勢を見ることにより、胎児の環境についてのアセスメントができる。
講演では胎児が子宮内で生活している様子や妊産婦の姿勢と腹部の変化について写真やイラスト入りでわかりやすい解説があった。
胎児が安定した姿勢でいられるように母と子の軸を合わせること、丸い形がよいことなど、胎児の環境としての母体について、帝王切開になる理由と問題点。また近年若い女性が尿もれや生理時の出血をコントロールできなくなっている原因は、骨盤底筋群が弱いからであること、背筋力、腹筋力も弱く重いものが持てないなどの現象が目立ってきている。対策としてバランスのよい立ち方や体操、寝方起き方、座り方、骨盤ベルトの使用などの注意点、また出生後は赤ちゃんの受け渡し方、抱っこの姿勢、寝かせ方についても写真をもとに説明があった。
~べびぃケアは胎内から始まっている~

著書:『おなかの中にいるときからはじめる べびぃケア』合同出版
共著:『思春期Q&A』(社)日本家族計画協会

講演②田村元先生

講師略歴:1987年東京歯科大学卒業 
1993年田村矯正歯科(江戸川区)開業
       日本矯正歯科学会認定医
       クリアスナップシステム、ブラケットシステムの開発等

講演タイトル『日本人の歯列 咬合の変化と生活習慣』

~講演要約(桐原)~
近年日本人の咬合が急激に変化している。歯の巨大化とバランスの不良。不正咬合の重篤化、先天欠如歯および埋伏過剰歯の数や発生頻度の増加、異所萌出、顎堤の脆弱化、舌の突出癖などを伴う症例の患者さんが増加し、対応に苦慮しているところである。歯科相談でもむし歯より矯正相談が増えてきている。先天欠如が早期にわかった場合には回避できるので、放っておいたらいけない症例は永久歯の交換まで待たず早い時期から対処し誘導する必要がある。乳歯の早期抜歯、拡大、萌出誘導し矯正すること、気道が細く狭くなっていることの改善などである。コンピューターを活用して分析し矯正治療に生かすことをやっている。
MFTも有効であるが既に遅しの感があり、幼少のときから家庭で姿勢に気を付けて育てることが必要。スポーツするのではなく、いい姿勢を日頃保つこと。横からの写真でチェックする。下顎位が悪いと飲み込みも悪い。
 変化の原因として、姿勢を保つ日本の文化が衰退していること、胎生期からのこと、食生活、日常生活における悪習慣が挙げられる。たとえばTVを見ながら食事すると偏咀嚼や顎の偏位、足を組む習慣があると骨盤のゆがみが起こり側彎から顎位に影響する、頬杖や肘をついたまま前屈みの姿勢で食べることにより日常の姿勢が悪化し、舌の位置が不正になって気道の閉塞や顎位の不安定化につながる、、、などである。
 知識偏重の教育と西洋文明の影響は明らかに姿勢を悪くすることに繋がっている。子どもを塾で勉強させるよりも日頃、口を閉じて食べることや正しい姿勢でよく噛む、歩かせる方がずっと本人の将来のためには有効で幸せになる、など、文明の危機に関する持論を展開して熱のこもったお話が続きいた。また、クリアスナップシステムとT21ブラケットシステム、プライヤーについて開発者としての解説があった。

著書:『矯正歯科診療所のコンピューター活用術』東京臨床出版
   『フルパッシブ矯正の理論と臨床、生理的咬合に調和hした安定度の高い咬合をめざして』デンタルダイヤモンド社

質疑応答 (※質問をクリックすると、回答が表示されます)

吉田敦子先生

Q1:内臓下垂から循環が悪くなりむくみや冷えの原因となるのは解ったが、骨盤底筋と尿漏れの関係など予防のポイントがあれば教えて頂きたい。

A1:お尻の穴、尿道や膣締めなどの運動は座っていてもできる。たとえば信号待ちしている間、台所に立っている時などに誰にも気づかれずに出来る。妊婦の時代からそのように姿勢を正すことを心がけるのも有効な方法。


Q2:子供たちの姿勢の悪さに対し、母親、歯科医として今から何ができるのか?

A2:よい姿勢が保てる環境にする。食事時の椅子の高さなど。首がすわるまでは首を大事にする。腹ばい、ハイハイ、をたくさんすることにより腹筋、背筋が鍛えられる。ジャングルジムで四つ這いになって手足を動かすなど遊びの工夫をすると、水平時代に鍛えたことが垂直になって立位で出来るようになる。など、今からでも前向きに考えてやっていくことが大事。


Q3:出産回数を重ねると、子宮内環境はどうなるのでしょうか?下の子の方が歯並びが悪い気がする。

A3:妊娠すると、絨毛から出るリラキシンというホルモンで靭帯が緩みます。出産で胎盤が娩出されるまでリラキシンは分泌され、産後も1~2か月くらいは影響が残ります。リラキシンで緩んだ靭帯によって、妊娠で大きく重くなった子宮を支える骨盤が広がり、産後回復しないまま経過して次の妊娠をした場合、また、それ以上に骨盤が広がるということになります。脊柱が支えにくくなり、脊柱湾曲がみだれることと、広がった骨盤によって内臓下垂が進みます。また、靭帯のゆるみによって、骨格のバランスも崩れやすく、子宮の環境は悪化していくと考えられます。


Q4:正しい姿勢、正しい骨盤支持力を得るための 運動・予防法を教えて下さい。
Q5:背筋力を鍛える具体的な方法 知りたいです。

A4.5 背筋力だけを鍛えるのではなく、体幹(背筋群、腹筋群)と骨盤周りの筋肉を鍛える必要があります。また、筋力アップの運動の前に、バランスの調整をする運動(たとえば、操体法など)をおこなうことが大切です。また骨盤は、骨盤底筋群で内側からも支えられているので、骨盤底筋を締めながら、おなかをへこませて吐く深呼吸も効果的です。
体幹力のアップのためには運動だけではなく、良い姿勢を続けることも、インナーマッスルを鍛えることになるので、立ち方、座り方に気をつけ、左右差のない脊柱湾曲が保たれる姿勢を心掛けましょう。


Q6:安産のために、中高生・10代女子が気を付けること。例えば、スポーツなどはしていたほうが良いですか?

A6;骨盤は、初経前後で大きく発育します。
浜松医大の鳴本助教の調査の結果では、「身体活動量が増加するほど、骨盤横径の発育が大きく、骨盤形態は相対的に左右に幅広くなる可能性が考えられる。また、強度の身体活動より、歩行などの軽度から中等度の身体活動の方が骨盤横径の発育に寄与している可能性が示唆」されています。
また、正しい姿勢を心掛けて継続することで、インナーマッスルが鍛えられていきますので、日常的に、立ち方、座り方を正していくことが必要です。つまり、内転筋、大臀筋をしっかり使い、脊柱を支える骨盤を立てて、座る、立つ、ことも大切です。

田村元先生

Q1:顎の形が不正咬合につながるとすれば、どのようにしたらよいか。

A1:姿勢をよくすると正しい筋肉の使い方ができ、咀嚼量、歩行量も増える。まず姿勢から、がアプローチの原則である。


Q2:顎の形が細くなったり、逆三角形になるのは姿勢の悪さが原因なのでしょうか?
姿勢が良くなれば、顎の形は良くなりますか?

A2:残念ながら、一個人での短期間の変化はほぼ期待できないと思います。
以下、エビデンスを示すことが難しいため、ほぼ私見の内容となります。ご容赦下さい。
顎の形は環境を含めた様々な要因により、集団としての平均的な顎の形が世代を経て変化しています。
顎の形と姿勢の悪さは連動していますが、ごく単純に言ってしまえば筋活動量が減り、良い姿勢を維持する力も弱まっている人は顎の形が華奢になっている可能性が高いと思います。
また、ここで言う顎の形に影響を与えるような筋力とはスポーツの記録を生み出すような筋力ではなく、日常生活でごく普通に体を動かす筋力を考えています。具体的には体幹を支える原始的な筋肉であると考えられます。世の中が非常に便利になったことにより短期間にかつ急速に人の一日の筋活動量が減っていることが筋力の脆弱化の原因であり、一種の文明病とみなしていいと思います。江戸時代の旅人がトレーニングを事前に行った記録は東海道中膝栗毛にも記載はありませんし、町人が普通に徒歩でお伊勢参りをしていたことを考えると、歩く力は相当落ちていると考えられます。
まとめとして、むしろ、姿勢の悪さは、体幹を維持する筋力が弱ってきている警告ととらえるのが正解だと考えます。
実行するのは大変ですが、姿勢に気を配ると共に、よく歩く、まめに体を動かすことが重要です。。


Q3:最近の子供たちに 先天欠如・巨大歯が多くなっている、顎が小さくなっていることを考えれば、歯は小さくなったほうが合理的のような感じがするのですが、 巨大化しているということは なぜでしょうか?

A3:原因は諸説ありますが、原因はわかっていません。確かに、歯が大きくなるのは様々な点で不利です。
顎は狭くなり、奥行きが減り、歯は巨大化していますので、当然年々叢生の重篤度が増しています。
また、歯冠は巨大になっても歯根の長さは同等かむしろ短くなっているので、歯冠歯根比率も悪化しています。


Q4:先生が開発されたブラケットとは?

T21というブラケットは不肖私が2009年に(株)トミーの協力を得て開発した次世代型ブラケットです。
ブラケットには結紮型ブラケットと非結紮型ブラケットがありますが、このT21は非結紮型です。非結紮型は別名セルフライゲーションブラケットとも呼ばれ、タイプは様々ですが、開閉の効くシャッター(蓋)にて矯正ワイヤーを保持する機構を持っているタイプが多いです。
そして、セルフライゲーションブラケットはここ10年でぼぼ矯正治療の主流となりつつあります。
次に非結紮型のブラケットの特長を挙げると以下の二つがあります。

1.結紮線を結ぶ、除去する手間が省けるため、一回あたりの処置時間の短縮が期待できる。
2.矯正ワイヤーをスロット底、つまりブラケットに強く押しつけることが無いので、静摩擦抵抗が減少する。そのため、矯正ワイヤーの滑りが良くなり、歯の動きが速くなる。特に初期のレベリングステージにおいてこの現象が顕著に起こる。

しかし、その反面欠点として

1.シャッターが壊れると、ブラケットを付け替えないとワイヤー保持機能が失われる。
2.シャッターを含めた構造が複雑になり、小さく作ることが難しい
3.シャッター周りにプラークが沈着するので、清掃性に難がある。

従って、セルフライゲーションブラケットの長所を維持しつつさらに優れたものにするため私はシャッター(蓋)部分を、ブラケット本体から分離可能にした全く新しいコンセプトのブラケットを作りました。
これがT21です<写真1:T21を口腔内に装着している様子、写真2~4:キャップを装着しているところ>。


写真1

写真2 キャプ装着前のブラケット本体 写真3 キャップを装着している様子 写真4 キャップを装着した後

特徴として
1.キャップの種類を替えることににより、瞬時に様々なブラケットに変身することができる。
<写真5参照>
2.キャップごと交換するので、プラークの停滞が無く清潔である。
3.ブラケット表面が非常に滑沢なため口内炎になりにくい。
4.ブラケットスロットと矯正ワイヤー間に適度な空間<バーティカルロストモーション:写真6>が存在するため、歯根膜の受容体に伝わる咬合時の応力が
生理的な状態と近似している<写真7,8>。その為、矯正治療中の顎位が安定し、装置除去後の歯槽硬線も早期に現れる。

写真5 キャップを替えることにより、フック付ブラケット、パワーアーム付ブラケット、ワイヤー二本装着することにより3D矯正が可能になるブラケット等に変身します。


写真6 バーティカルロストモーション


写真7 T21ブラブラケット装着下では天然歯列と同様な咬合応力が伝わる


写真8 バーティカルロストモーションのないブラケットでは咬合時に歯全体に咬合応力が伝わる

感謝状と花束の贈呈

閉会:竹内千惠副会長

集合写真撮影


集合写真

懇親会の様子

講演会終了後 37階から3階の「CHOiCE!」に会場を移し、
13:00~懇親会が開催された

開会: 東川輝子理事

来賓挨拶

東京都歯科医師会 小枝義典理事
参議院議員 石井みどり先生

乾杯

岡部浩子顧問

協賛業者紹介

藤岡万里理事 各1分間スピーチ

14:00~ジャズライブ演奏

 東京歯科大ジャズ研OB「バターコーン」 

日本歯科医師会会長 大久保満男先生 挨拶

   歓談 ミニ同期会2グループ開催

閉会

山田茂子監事

15:30 終了



 


協賛業者一覧(クリックで拡大します)