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平成28年度秋の講演会は盛況のうちに無事終了致しました。

平成28年度「秋の講演会」レポート

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テーマ『総義歯診療の女神に近づく第一歩 –印象採得を知るー』

平成28年度秋の学術講演会はシャングリ・ラホテル東京において行われました。

  

講演Ⅰ 講師:東京歯科大学 老年歯科補綴学講座教授 櫻井 薫先生

講演Ⅰ:「患者さんが満足する総義歯の印象採得法」

講師:東京歯科大学 老年歯科補綴学講座教授 櫻井 薫先生

レポート

櫻井教授は適合の良い義歯を作製するには、まず口腔内診査を十分に行うことが重要。
次に概形印象のポイント、そして最終印象では各個トレイ作製時の注意事項を把握して、咀嚼、嚥下に関わるランドマークの印記の必要性を説明された。
今回、講演に先立ち事前に質問事項として、小帯切除術の必要な症例、顎堤の薄い症例の維持についてそれぞれ症例を挙げて説明された。口角炎の対処法は咬合高径を上げるだけでなく、口腔内の汚れすなわち義歯の汚れが関与するので義歯の染め出しをして患者さんに認識していただく必要がある。

講演Ⅱ 講師:東京歯科大学 解剖学講座教授 阿部伸一先生

講演Ⅱ 明日の診療に役立つ無歯顎治療のための機能解剖 

講師:東京歯科大学解剖学講座教授 阿部伸一先生

レポート

阿部教授は、総義歯の印象採得には口腔周囲筋及び嚥下に関与する筋を把握することはもちろんであるが、歯を失った後のこれらの筋肉の変化を知ることが必要とされ、義歯を使うことにより再び骨、筋肉、脳への活性化に繋がり、骨は負荷をかけることによりリモデリングする。
下顎枝には咀嚼筋が付着しているため歯を喪失しても大きな変化は見られないが、下顎体は二階建ての建物が平屋の状態になり、変化が大きくなる。オトガイ筋の付着部位は設計上避ける必要があるので、印記しておく。上顎は歯の喪失後、歯槽頂が内側に移動し口蓋腺の開口部位が大きく開いて来るという変化が起きる。
患者さんが満足する総義歯は、義歯周囲の筋肉、頬筋、口輪筋に囲まれているため、それらの筋肉の走行を考慮する必要があり、下顎はこれらの外側の筋肉と内側の舌に挟まれて維持するように作製できると安定が得られる。
嚥下と総義歯作製の関係については、嚥下は咽頭周囲筋が締められることで起こり、食塊が送られる際には口蓋腺から出る唾液により送り込まれるので、口蓋小窩を塞がないように義歯後縁の設定を決めることが大事である。

櫻井先生、阿部先生のご講演は、日常の臨床で私達が遭遇する事例を、基礎知識に基づいて再度確認することの大切さを知ることができ、短い時間ではありましたが大変充実した時間を過ごすことができました。